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蒼穹のフロンティア【テンペスト格納庫、ふたりの背中】
テンペストの格納庫には、機械の鼓動のような低い駆動音が響いていた。 巨大なアーマードユニットの脚部に並ぶ二つの影―― ソフィアとミリアは、出撃を控えた機体の最終確認に取りかかっていた。 ソフィアは軽やかな動きで機体の側面を点検し、 ミリアはその後ろで、工具を手にしながら慎重にデータを確認している。 スーツに包まれた身体の輪郭は、 これまで積み重ねてきた訓練の証のように引き締まっていた。 それは美しさではなく、 生き抜くために鍛えられた“仕事の身体”だった。 「……今回も、無事に帰ろうね」 ミリアが小さくつぶやくと、 ソフィアは振り向かずに、 それでも確かな笑みを浮かべてこう返す。 「もちろん。そのために、ここにいるんでしょ」 格納庫の天井を走るライトが、 二人の背中を白く照らす。 その光は、まるで“出撃の合図”のようだった。 ここは戦場の入口。 だが同時に、仲間を信じる場所でもある。 ソフィアとミリアは、 互いの存在を背中で感じながら、 静かに――だが確かに、戦いへ向かう準備を整えていた。
