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集合サイン ーーブリズ・ラビット結集せよーー

雪がやんだばかりの通勤路だった。 歩道脇の植え込みの前で、ブロント少尉は足を止め、ゆっくりとしゃがみこんだ。 そこには、小さな雪うさぎが置かれていた。耳は短く、胴体はやや歪んでいる。 少尉は、じっとそれを見つめる。 「……これは」 真剣な顔で、低く呟いた。 「集合サインですね」 その瞬間、少尉の脳裏にいくつかの映像が重なった。 白い砂嵐。伝説として語られる傭兵部隊――砂漠のネズミ。 ネズミは小さい。だが、生き延びる。 「デザート・ラッツ……」 言葉の響きが、自然に雪へと滑った。 ここは砂漠ではない。雪積もる帝都だ。 「ブリザード……ラビット」 吹雪の中、白い影が集結する。 長い名称は現場では使われない。 「――ブリズ・ラビット」 少尉は、納得したようにうなずいた。 「やはり……寒冷地専用部隊、ブリズ・ラビットか」 「あら、少尉?」 声をかけられ、振り向くと若菜少尉が立っていた。 コートの襟を軽く押さえ、足元の雪うさぎを覗き込む。 「近所の子供が作った雪うさぎですね」 「表向きは、そうでしょう」 ブロント少尉は立ち上がり、胸を張った。 「ただ、私には同類はわかります。もっとも別戦域でしたが。」 「別戦域?」 「熱帯です。――アマゾン・キャット」 一拍の沈黙。 「……東南アジアですけど」 「はい」 雪うさぎは、何も語らない。 若菜少尉は少し首をかしげて、もう一度雪うさぎを見る。 「では、このサインを置いたのは?」 ブロント少尉の視線が、ふと帝都の地下へと向く。 通勤路の下を走る鉄道。張り巡らされた通路。 人知れず、何かが動く場所。 小さくて、目立たなくて、だが確実に厄介な存在。 「……なるほど」 少尉は、静かに結論を口にした。 「メトロ・グレムリン」 「え?」 じっと見つめられ、若菜少尉は思わず小首をかしげた。 「帝都の小悪魔です」 若菜少尉は言葉を失ったまま、雪うさぎと少尉を見比べる。 「それ、どこで使われている呼び名ですか?」 「使われていません」 「……?」 「だから、まだ問題になっていないんです」 少尉は、何事もなかったかのように歩き出した。 雪うさぎは、朝の光の中で、静かに溶け始めていた。

さかいきしお

コメント (9)

翡翠よろず
2026年01月20日 06時42分
kacky333
2026年01月20日 06時07分
みやび

いっぱい作って並べるか!🐇🐇🐇🐇🐇

2026年01月20日 05時32分
もみ
2026年01月20日 04時22分
Rin
2026年01月20日 04時16分
ucchie2772
2026年01月20日 03時51分
えどちん
2026年01月20日 03時30分
白雀(White sparrow)
2026年01月20日 03時28分

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