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蒼穹のフロンティア【視線の正体………!?】
艦内区画を歩くたびに、 イザベルはふと視線を感じていた。 「……ねえ、リリア。さっきから……誰か、見てない?」 その言葉に、リリアも静かに頷く。 「……うん。 何もいないはずなのに……落ち着かない」 廊下の曲がり角、整備区画の奥、 モニターのないはずの場所。 まるで、 **どこかから“観察されている”**ような、 得体の知れない違和感がつきまとっていた。 ある日、 イザベルが床に落ちていた小型カメラを見つけた。 「……これ……艦内カメラじゃ、ないわよね?」 リリアが端末で解析すると、 その信号は―― 個人端末へリアルタイム送信中だった。 追跡先に表示された名前を見て、 二人は同時に叫んだ。 「……ロレンツォ!?」 張り込みの末、 倉庫裏の端末ルームで発見されたのは、 録画データを整理していたロレンツォだった。 「え……いや、こ、これはだな―― ほら、その……資料的な価値とか……」 言い終える前に、 イザベルの拳が唸る。 「……資料は、 自分の顔で作ってください!!」 リリアが続けて低い声で言った。 「覚悟は、いいですね大尉!?」 その後―― 艦内には、 “ロレンツォが療養室に直行した” という噂だけが静かに広がった。 一方、 イザベルとリリアは大事な約束を交わす。 「……二度と、こんな事させない」 「……絶対に」 彼女たちは、もう怯えない。 視線は―― 奪われるものではなく、 向けさせるものだと知ったから。
