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アイピク島武道伝外伝 ― 幻影のカッター ―

夜の海風が吹き抜ける仮設テントに、不釣り合いな熱気が満ちていた。 アイピク島の仮設ゲームセンター── そこにぽつんと置かれた古びたアーケード筐体がひとつ。タイトルは、 「鋼影武闘拳II ~CRUSHING FATE~」 格闘ゲーム黄金期の遺産のようなそのゲームには、2Dドット絵の鮮やかなキャラたちが勢揃いしている。 今、画面には「K.O.!!」の文字が弾けていた。 「ふ……勝ったな。これが“クレセントカッター”の真髄だ」 ブロント少尉が得意げにレバーから手を離す。 金髪ポニーテールを軽く払って、肩越しに振り向く。 筐体の画面には、黒地に金のラインが入ったチャイナ風戦闘服の女性キャラ──「シェン・ライ」が勝利ポーズを決めていた。 その相手、派手な赤い軍装とマントを翻しながら突進してきていたのは、悪の首魁「グランダル」。 空中を水平に回転しながら突進してくるその技は、まさに「サイコインパクト」と呼ばれる必殺。 そして、それを迎え撃ったのが少尉の放った── ↘←↙↓↘→↙←↖ + K 【超必殺技:クレセントカッター】 宙を斜めに裂くような三日月状の回し蹴りが炸裂し、紫のオーラを纏ったグランダルを真っ二つに切り裂いたのだった。 「これ……この前チェルキーとの訓練で放った蹴り技クマ?」 プーにゃんが感心しつつ、画面を覗き込む。 「実戦で使えるゲーム技、というやつだな。理論の勝利だ」 少尉はやけに真面目な顔で語る。 その後ろで、チェルキーがやや困惑気味に小声で言った。 「……このゲーム、なんか全キャラ似てるよね。金髪だし……気のせい?」 「えっ、プーにゃんも思った! 髪型とか、目とか、似てるクマね?」 「きっとグラフィックチップの都合だろう」 と、意味不明な分析をする少尉。 (金髪ならば全員少尉に見えるのかしら?) 富士見軍曹がツッコミそうになるが、黙って腕を組んだ。 画面の上部にはタイトルロゴの文字がゆっくり流れていた。 鋼影武闘拳II ~CRUSHING FATE~ 「シェン・ライ vs グランダル」 ★ステージ:熱帯夜の浜辺(Aipik Island) ドットの星空の下、シェン・ライがチャイナドレスの裾を翻し、勝利のポーズを決める。 少尉は筐体に手を添えて、ポツリと呟いた。 「うむ……ゲームという幻の中にも、真実の武がある。これは戦訓とすすべきだな……。次の訓練科目として」 「……まさか“対サイコインパクト防御演習”とか始めないでしょうね」 軍曹の不安をよそに、少尉の目はすでに次のステージへと向いていた──

さかいきしお

コメント (23)

thi
2025年07月20日 10時50分
ガボドゲ
2025年07月20日 03時12分
早渚 凪
2025年07月17日 15時20分
うろんうろん -uron uron-

実戦的なゲームなのだぁー!

2025年07月17日 14時56分
仮免許練習中
2025年07月17日 13時57分
takeshi
2025年07月17日 13時16分
白雀(White sparrow)

無人島にもゲームが! すっかり文明化してきた!

2025年07月17日 12時41分
五月雨

Here Comes A New Challenger!

2025年07月17日 11時50分

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