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バレイ対決とバレーシューズ
悪役令嬢事レイちゃんとの4回目の勝負です。 今回の勝負は・・・・・・ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「明日、勝負よ。バレエ対決で決めましょう!」 そう言い放ったレイちゃんは、くるりと華麗に一回転しながら言う。 ジャージ姿で。 金髪ドリルのツインテールが、その場の空気すら巻き込むように舞う。 「明日は本気で行きますわよ」 それを見たブロント少尉は、真剣な顔でうなずいた。 「――ふむ、理解した。バレー対決……私にふさわしい舞台だな」 「ちゃんとバレイシューズ履いてきなさいよね」 ◇ 翌日、廃校(現在公民館兼教育センター)の体育館。 木の床が鈍く光り、窓から差し込む午後の日差しが柔らかく会場を照らしていた。 壁には「歓迎!バレイ対決」の横断幕が風に揺れる。 そこへ、ドアをそっと開けて入ってきたのは―― 「こっ、こんにちは……その、遅れてすまない……!」 ブロント少尉だった。 だが、彼女の格好を見てレイちゃんは一瞬、思考を停止した。 白い体操着にネイビーのライン。 下は、昭和風のクラシックなブルマ。 脚には厚手の白いハイソックス。 そして、足元に履かれているのは赤ラインのバレーシューズ(上履き)。 体育祭か。 いや、どう見ても体育祭だ。 少尉は恥ずかしそうに内股で足をそろえ、視線をそらしてもじもじしている。 「ちょっ、ちょっとまって……ブロントさん、それは……」 「……伝統的に、若年女子の運動には最も適した装備だし。 これで問題ないだろう? バレーシューズって上履き、何か恥ずかしいけど・・・・・・ その……、……バレー対決なんだし……」 「ち・が・い・ま・す・わぁああああああああっっ!!」 体育館にレイちゃんの絶叫がこだました。 「バレエですのよ!! 踊るやつ! ピルエット! トウシューズ! クラシック!!」 「……なっ!? そ、そうなのか……? じゃ、じゃあこれは……」 「どう見ても体育の時間ですわ!!」 顔を真っ赤にして固まる少尉。 ……だが、しばし沈黙ののち。 「……だ、大丈夫。バレエって、脚を上げてくるくる回るものなんだよね? なら、これでも……っ!」 急に意を決したように、少尉が床に踏み込む。 「――見せてやる、私の超必殺技っ!」 「えっ、まさか……ちょ、まっ――」 「クレセントカッターッ!!」 バッ!! 体を大きくひねり、華麗(?)に脚を振り上げ――その瞬間、 ぐらっ。 「わわっ――!?」 バランスを崩し、くるっと半回転。 ぺたんっ! 床にしりもちをついて、少尉のバレーシューズが虚しく空を切る。 「い、いたた……ちょっと回りすぎた……かな……」 真っ赤な顔で、膝を抱えた少尉のバレーシューズが、天井の光を反射してキラリと輝いた。 「こっ、こんかいは・・・・・・、私の負け・・・・・、みたいです」 ぽそりという少尉に。 レイちゃんが頭を抱えながら小さくつぶやく。 「もう……何もかも間違ってますわ……」
