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アーゼリン、暗黒猫メイドエルフ降臨

太陽が照りつける、青空とヤシの葉が揺れる常夏のビーチ。 ここ、アイピク島の名物メイドカフェ〈黒猫亭〉では、今日も黒猫メイド姿の給仕たちが賑やかにドリンクを運んでいた。 「今日も熱いにゃー!といっても氷が溶けるのも演出のうちにゃー!」 厨房でシェイカーを振る黒猫店長が、ぐるぐると尻尾を揺らして笑う。 黒髪ボブにピンクのインナー、耳はぴょこぴょこ、声はどこか艶っぽい。 その日、突如として、店にとんでもない助っ人が現れた。 「ふむ……私の力を貸せというなら、やぶさかではないぞ?」 そう言って店内へと現れたのは、 銀髪のダークエルフ美女──アーゼリン。 黒猫店長がどこからともなく召喚(もしくは拉致)してきた、曰くつきの存在だ。 彼女は不思議な貫禄を漂わせながら、豪華にカスタマイズされた黒猫メイド服に袖を通し、満足げに胸元を整えていた。 「……ふふ、なかなか似合うな。このような装いも、悪くない」 装飾の多いレースと、肩にあしらわれた銀の飾り、微妙にふわっと揺れるスカート。 どう見ても、他の店員たちより二段階くらい豪華な仕立てである。   ――その光景を、店の隅から見つめるふたりの少女がいた。 「……あいつは、危なすぎる。この島だから、改めてみると一層場違いだよ、“寒気”のような気配……」 小声でつぶやくのはリリス。銀髪のハーフエルフで、冷静沈着な美少女。 「やばくない? あの人のやる事って、”他”の人達(別世界の住人)にはついていけないって……」 ドワーフなのに引き締まった細身な体つきで、可憐な姿のチェルキーが、思わず額に汗をにじませる。 二人の視線を知ってか知らずか、アーゼリンが指をはじく。 「えっ、まさか、本気で魔法使う気じゃ──」 「……では、見せてやろう。氷の精霊王《フェンリル》よ、応じよ──」   アーゼリンの手元に、白銀の光が輝く。 瞬間、アイスラテのグラスの中に、極上の輝く氷柱が音もなく生成された。 ……だけでは終わらなかった。 辺りの空気が一変する。 ひゅうううううっ……!! 突如、南国のビーチに冬の風が吹き荒れた。 客たちが浮き輪を抱えたまま凍え、メイドたちは「さ、さむ……っ!」と水着、みたいなメイド姿でブルブルと震える。 テラスのヤシの木には、なぜか霜が降り始め、BGMのスチールパンが徐々にスローテンポに。 その中、アーゼリンは平然とした顔で、氷の粒が浮かぶアイスラテを差し出す。 「うむ。これぞ、精霊の力で冷やされた至高のアイスラテだ。……この一杯に、私の名を刻もう」   一方。 「にゃはははは!!冷房代が浮くにゃ!! 雪も似合うメイド服だにゃ!!これは新しいコンセプトメニューにゃ!!」 黒猫店長は氷の床の上で尻尾を振って大はしゃぎ。 ブロント少尉が店内のストーブを引っ張り出してくる中、南国のビーチはキスカ島のような雪景色に変貌しつつあった。   リリスは、遠くからその光景を眺めながら、ぽつりと漏らす。 「これ……もう、誰か止められるのかい?」 チェルキーは肩をすくめて、「無理だね」と即答した。   ──そして数時間後。 アイピク島気象台が記録した「真夏日中における突発的降雪と気温マイナス3度の異常現象」は、 後に「アーゼリン事件」として黒歴史に刻まれることとなった。 だが、アーゼリン本人はその責任を問われることもなく、誇らしげに……。 「ふむ、夏はこれぐらいがちょうど良い。精霊たちも喜んでいる……」

さかいきしお

コメント (26)

クマ×娘 D.W

アーゼリンさん美しい💕では、せっかくなので、一杯いただこうかの~♪ ☕:(´ºωº`):ヒェエー

2025年08月07日 05時42分
gepaltz13
2025年08月06日 21時00分
アイコス・イルマ
2025年08月06日 20時10分
さらさ

面白かったです(^◜𖥦◝^) 時空を超えてとばっちられた日本の江戸時代の農家がこちらですw

2025年08月06日 17時08分
早渚 凪

常夏の島に住んでた原生生物たちが一番被害を喰らっていると思うですよ。変温動物系はこの一件で死滅したんじゃないかなぁ・・・?

2025年08月06日 15時26分
thi

こうしてアイピク島撤退作戦(一時避難)が行われるのですね

2025年08月06日 14時26分
takeshi
2025年08月06日 14時10分
s024
2025年08月06日 13時53分

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