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事案発生:《幻の指令(ゴースト・コマンド)》
帝国自衛陸軍情報部対カオス分室(ブロント対策班)。朝。 分室は異様な緊張感に包まれていた。 松笠大将、リゼット少佐ら分室メンバーの前に置かれたのは、砂と泥にまみれた旧式のテープレコーダー。 それは、ブロント少尉がアイピク島の演習後に残した、謎の遺留品だった。 リゼット少佐は完璧な姿勢を保ちながら、この**「非効率な遺物」を分析していた。 彼女のオッドアイは一点を見つめ、背後のスクリーンには復元された音声の声紋グラフ**が、不気味に上下している。 🚨 謎のテープ再生 静寂の中、スピーカーからノイズ混じりの声が響いた。それは、ブロント少尉の声だった。 (ザザザ...ヘリのローター音に似た低音) 「...私は今、ここにいる...彼らは私を探している...しかし、私は彼らを待たない...」 (パチパチという焚火の音、静かな波の音) 「...私の任務は既に完了した。全ては『砂浜の王女』の計画通り...これから、私は『終着点(ターミナス)』へ向かう...」 (突然、「ギュルルル...」とテープが高速回転する不協和音) 「...誰にも知られてはならない...真実は海の底だ...隊長、貴様は知っているか...カエルの合唱が...全てを支配する日が来ることを...そして、私は...パフェ...」 (「カチッ」という電源が切れる音でテープは終了) 🤯 論理の暴走 リゼット少佐は即座に分析結果を口にした。「『パフェ』という単語の論理的関連性は不明。 しかし、テープの断片性と**『カエルの合唱』という極度の情緒的脅威を組み合わせることで、追跡者の精神的耐久限界を試す『心理戦術プロトコル』**と推測します。」 「ばっかやろう!! ぶん殴って連れてきて聞き出せばいいだろうが!」と梶谷少佐の怒鳴り声が響く。 「暴行は論理的敗北を招く」とリゼット少佐が冷徹に反論する。 御宅参謀は目を輝かせる。「これは**『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の手法です! 少尉は演習を究極のロールプレイングゲーム**として捉えている! **『カエルの合唱』**こそ、少尉が恐れる真の終着点を暗示しているに違いありません!」 リゼット少佐は、「パフェ」という論理的終着点から、ブロント少尉が秋葉原の猫カフェ『陽だまり』にいることを座標解析で突き止め、分室の緊迫はピークに達した。 ☀️ 最も単純な真実の帰還 その時、扉が勢いよく開き、若菜少尉がパフェの幸福感を全身から発散させながら飛び込んできた。 「昼休み戻りました!!...あれ、みなさん、どうしたんですか。慌てて。」 彼女はテーブルの上のテープレコーダーを見て、屈託のない笑顔で最も単純な真実を暴露した。 「あっ、そのテープレコーダー...さっき少尉のタブレットに映っていましたね。『ブレア・ウィッチ』を見ながら 『かっこいいよね』って言ってたやつ...」 2児の母のでもある、田母神大佐は、安堵からくる溜息をつき、少し茶目っ気のある表情になって言う。 「テープレコーダー、きっと使ってみたかったのね。『地獄の黙示録』みたいなかっこいい演出を自分でやってみたかったんでしょう。可愛いじゃない。」 リゼット少佐のオッドアイは、一瞬の静止の後、若菜少尉の無邪気な一言を**『少尉の行動を説明する、最も効率的かつ非論理的な真実』として、苦渋とともに受け入れた。 彼女が構築した複雑な論理は、「面白そうだから」という単純な情緒的動機**によって、音を立てて崩壊した。 松笠大将は、その全てを見届け、満足げにパイプを咥え直す。 「テープレコーダーの謎は解けたようだな。リゼット少佐、ご苦労だった。若菜少尉、パフェは美味しかったか?」 「はい!最高に美味しかったです!」という若菜少尉の明るい声が、分室の張り詰めた空気と複雑な論理を一掃した。 ブロント少尉のカオスは、最高効率で論理を破壊し、パフェという平和な終着点を迎えたのだった。
