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こけしゴーレム ひっこぬき
遺跡の奥、円形の祭壇。 多脚戦車のような台座が、低い金属音を立てて動き出した。 八本の脚が、まるで生き物のように床を掻き、石を砕く。 その上に―― 金属製の人型が立っている。 無表情。 目は細く刻まれ、口は線。 人の心を模す気配すらない顔。 「……あれ、絶対やばいやつだね」 チェルキーは苦笑しつつも、声は明るい。 若い娘らしい調子を崩さない。 「そうクマ!! かわいくないし、絶対しゃべるクマ!!」 次の瞬間。 人型の口が、ぎこり、と開いた。 「アマイナ…………」 「ほら!! しゃべった!! やっぱり古代兵器だね!!」 台座が変形し、魔力が集中する。 白刃も魔法も効きにくい―― その手の相手だと、誰の目にも分かった。 ――だが。 「いくクマ!!」 弾んだ声。 まるで遊びに行くみたいな調子で、プーにゃんが飛び出した。 「ちょ、正面から!? 待って待って、それ多脚――」 「つかまえたクマ!!」 金属音。 人型の胴体を、ベアハッグ。 「えっ」 「引っこ抜くクマ!!」 「えっ!? 今!?」 ごきん。 ありえない感触と音。 人型は台座から――抜けた。 美しいアーチを描く背中。 そのまま、技は完成する。 「倒したクマ!!」 「……え?」 チェルキーは、一拍遅れて声を出した。 「え? あれ? 古代兵器、もう終わり!!?」 台座が遅れて異常振動を始める。 封印崩壊。 魔力暴走。 爆発確定。 「うわ、これ完全にやばいやつだね!!」 「逃げるクマ!!」 プーにゃんは、 人型を頭の上に担いだまま走り出した。 「それ持って走るの!? 置いていこう!? 重いでしょ!!」 「戦利品クマ!!」 「判断が野生すぎる!! でも、まあ……今さらだね!!」 背後で、光が膨れ上がる。 「出口、一直線だよ!!」 「了解クマ!!」 二人は同時に跳ぶ。 ――次の瞬間。 遺跡は、光と爆風に包まれた。 外に転がり出た二人。 プーにゃんは、人型を掲げて笑う。 「無事クマ!!」 「……うん、無事だね!! 色々おかしいけど!!」 チェルキーは息を整え、明るく笑った。 「でもさ―― 一番怖かったの、あの人型よりプーにゃんだよ!!」 「褒め言葉クマ!!」 背後で、遺跡は完全に沈黙していた。
