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ブロント少尉、雷神と化す ~八重歯とバットと雨乞いと~
野良塾の訓練場に隣接する実習田んぼ。 連日の空梅雨で、地面はひび割れ、稲がしおれていた。 それを見たブロント少尉、金髪ポニーテールの美少女士官は、拳を握ってつぶやいた。 「……ここは私が、雨を呼ぶしかない……!」 その夕方。田んぼの端には即席の祭壇と盛り塩が。 白装束(コスプレ巫女)姿の少尉が、厳かに雨乞い儀式を開始する。 「雷神様、風神様、水神様……この地に恵みの雨を……」 そして早着替え―― 一瞬で、 トラジマミニスカ、付け角と付け牙、背中に太鼓、手には金属バット(野球部からパチクった。金属製)で鬼姿に変わる。 「いざ、鬼、訂正、雷神!!降臨ッ!!」 何かを超えた何かに目覚めた少尉は、田んぼの真ん中で太鼓を打ち鳴らし、とバット振り回して暴れ踊る!! そうすると、天が喜んだのか呆れたのか、はたまた怒ったのか、空が暗転し、ゴロゴロと低い雷鳴が響き始めた。 「なっ、なんか、一雨きそうね?」 訓練帰りの富士見軍曹が異変に気づき、駆けつける。 「何してるのブロント少尉……って、ちょっと!? なんで金属バット持って踊ってるの!?」 その瞬間、少尉が天に向かって金属バットを突き上げる。 「天よ!!わが求めに応じ、雷雲を!!風よ雨を稲妻よ!! いざ大地を貫け!!」 バットが空中で一瞬、何かの光を反射して、キラッと光る。 「――まずい!!」 軍曹、全力ダッシュからの軍靴での跳び蹴り! カシッ!! 「おわっ!!ぬおおぉぉっ!!」 金属バットがブロント少尉の手を離れ、空高く回転しながら飛んでいく―― そしてその瞬間! 「バリィィィィン!!」 遠くへ飛んだバットに、雷が**ドカンッ!**と直撃。 地響きすらする激しい閃光と轟音が大地を揺らす。 「うっ、うわああ!?」 突然の予想外(普通に当然の帰結なのだが)に驚愕に包まれ立ちすくむブロント少尉だが・・・・・・。 静寂のなか、煙の立つ地面を見つめながら、富士見軍曹が息を整えて近づいてくる。 「……あんた、何やってんのよ」 ごつんっ!! 富士見軍曹のゲンコツがブロント少尉の頭頂部に炸裂した。! 「ひゃいっ!? や、やえばが……!」 その衝撃で、コスプレ用の付け八重歯が、ぽろっ、と地面へ転がった。 「死にたいの!? 雷の中でバットなんて小学生でもやんないわよ!!」 雨に心地よく揺れている稲穂たちは、そんな二人の様子をみて楽しげに笑っているようだった。
