ぐるぐる攪拌! 三人寄れば甘味の知恵
アイピク島で、ブロント少尉が魔王さまとチェルキーの助力の元に、何かをやっています。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ――ここは南海演習地・アイピク島。訓練の名のもと、今日もなにかがおかしい。 「ぐるぐる回し、二十七……二十八……ッ! よしッ!! 完成ですッ!!」 黒詰襟の第一ボタンまで留めた軍服姿で、ミニプリーツスカートをさらに三段折り返したブロント少尉は、汗まみれになりながら手作りの攪拌装置を全力で回していた。 「次、お願いだよ〜。固まってきたね!」 緑髪の料理人、チェルキーは袖をまくり、攪拌されたクリームを絞り袋へと詰める。 くるくるとスムーズな手さばきで、見事な渦巻きをカップに盛りつけた。 「んふふ、見事な巻きじゃ。冷気の精たちも喜んでおるわい」 アロハ姿の魔王さまがギターを抱えて微笑む。天使の輪と悪魔の角が輝くその頭には、赤いバラの飾り。 手からは精密に温度調整された冷気が送り出されていた。 「魔王さま!持続冷却、助かりますッ!」 「よきかなよきかな。こうして皆で作る甘味……まこと尊いのじゃ」 絞り器から出てくるソフトクリームは白く、涼やかな香りを立てていた。チェルキーが仕上げのひと巻きを加える。 「できたよ〜。第一号、いっきまーす!」 カップを受け取ったブロント少尉は、恐る恐る一口……。 「――甘美……! これは、帝国式暑気払い……もとい、戦陣甘味ですッ!」 「んふふ、戦陣甘味とはまた武張った名前じゃのう」 「それ、名前のわりにとけるの早いよ。早く食べてね」 チェルキーが冷静に突っ込み、魔王さまがくすりと笑う。 暑い無人島の、ひとときの協力作業。そこには魔法も、努力も、そして甘味もあった。 「次は、日章型に巻いてみますッ!!」 「ちょ、ちょっと待つのじゃ! 巻きが逆じゃと崩れるぞい!」 「ホイップが暴れそうだよ〜……」 ――そして、アイピク島にまたひとつ、謎のソフトクリームが誕生した。
