白雀さんと合同作戦ですの―無人島優雅偵察行―
ブロント少尉がやっぱり白セーラーの方が涼しくてお嬢様っぽくてよいと思ったらしいです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 蝉のような不思議な声が響く南国の密林。潮の香りと木々の匂いが交じり、どこか幻想的な光が、木漏れ日のように降り注いでいた。 そんな中を歩く少女がひとり――いや、ひとりと一羽。 金髪を柔らかくまとめたポニーテール。品の良いアイボリーがかったセーラー襟に、細やかな刺繍と細リボン。 涼やかな薄藍のスカートはふわりと揺れて、どこからどう見ても良家のお嬢様が無人島をピクニックしているようにしか見えない。 だが。 背中には、“頭の上を越えるほどの巨大リュック”。 腰には、ウエストベルトとタクティカルポーチがぐるりと装備され、ブレストベルトまでしっかり締められている。 しかも、両手にはスティック型のGPSとフルサイズの地図板。見間違いようもない、本職の軍人仕様。 にもかかわらず―― 「ふふっ、ジャングルにも涼しい風が吹くんですのね。素敵ですわ、白雀ちゃん」 ――声はまるで紅茶を啜る令嬢のそれだった。 「(……ちゅ、チュン!?)」 隣を歩く白くて丸いスズメ大の鳥――いや、なぜかニワトリサイズにまで巨大化している白雀ちゃんは、思わず足を止めた。 (何なのチュンこのひと!? セーラー服、めちゃお嬢様なのに、荷物はどう見てもレンジャー部隊の3泊4日装備チュン! なのに、笑顔がキラッキラしてるチュン!!) 「白雀偵察兵、あちらにあるのはバナナの自生群ですわね? 本部に報告しておきますわ」 「(なんで丁寧語なのチュン!?)」 白雀ちゃんは脳内で思いきりツッコんだ。 この人、ほんとに何者チュン!? 前に空母でも暴れてたって聞いたチュンけど……! だが、ふとブロント少尉が振り返って微笑んだその表情に、白雀ちゃんは一瞬だけ黙った。 「この装備でも……ふふっ、密林を歩くのは気持ちがいいものですわね」 その笑顔は、どこまでも透明で、まるでジャングルの奥に一輪咲いた百合のようだった。 「(……うわ、軍人なのに、ちょっとカワイイと思っちゃったチュン……!)」 密林の奥に、鳥と少女の足音が続く。 そしてどこからともなく聞こえてくる。 「少尉ー! 重くないんですかその荷物!」 「優雅な装備は、淑女のたしなみですわ!」 ──どうしてこうなったチュン。
