砂上探偵ブロント少尉

アイピク島の食糧庫が荒らされます。名探偵が解決します 魔王さま、YUMEさん、ご協力感謝いたします。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー アイピク島、昼下がり。浜辺のキャンプに設営された食料テントが、無惨にも荒らされていた。 テーブルの上には、かじられたビスケット、粉々になったクラッカーの袋、そして……なぜか転がるスイカの皮。 「……これは……重大事件ですッ！」 ブロント少尉が、鹿撃ち帽とチェック柄マントを詰襟軍服の上から羽織り、目を細めながら虫眼鏡を構える。 金髪ポニーテールが風になびき、頬の汗が真剣さを引き立てている（※本気である）。 「各員、冷静に聞いてください。この事件には――“犯人”がいます！」 周囲の隊員たち（と野良塾メンバー）が半歩引く中、緑髪ポニテのドワーフ少女チェルキーが小声でつぶやく。 「当たり前でしょ……荒らされてるんだから……」 「まず、現場を見てください！　この爪痕、この破られた布、そして……この足跡ッ！！」 ドン、と地面を指さすブロント少尉。その先には――大きな足跡が残っていた。まるで巨大な熊のような。 「こっ、これは……まさか……っ！！」 ※ここで、画面上に吹き出し付きの妄想絵：熊がガツガツと食料を食い散らかしている！ 「間違いありません。犯人は“熊”です！」 ババーン！！ 「――つまり、犯人はこの中にはいないッ！」 （※ナレーション：彼女はまだ知らない。この中に完全に熊に変身できる少女がいることを……） 場がしん……と静まり返る中、銀髪ロングのぷーにゃんがじわじわと視線を浴びる。熊耳のカチューシャを触ったり、指先をそわそわさせたり、あきらかに挙動不審である。 「なんだクマ？　ぷーにゃんじゃないクマよ？」 「いや何も言ってないけど！？　急に自己申告！？」 「そうだ、これは野生の動物の仕業だ。人間の仕業とは思えない。みんな安心していい。犯人は野生の脅威だったのだ！」 ドヤ顔で語るブロント少尉。完全に納得した顔でうなずく。 ぷーにゃん、なおも手のひらをそっと背中に隠す（なぜかそこにクッキーの破片）。 その時だった。 「――フッフッフ……その推理、少々早計ではありませんかな？」 ぬぅっ、とテントの影から現れたのは、ワインの瓶とバゲット片手に悠然と歩く一人の神父――チャーリー・ウッドだった。 「拙僧、盗賊にして神のしもべ――そう、真犯人ですぞ！！」 「な、なんだとッ！？」 ブロント少尉、ズザッと一歩後退。 「おぉっと、否定は無用。拙僧が盗んだのは――貴殿らの食料……ではなく、心ですぞ！！　特に、ぷーにゃん殿の?」 ぷーにゃん：「……！？」（赤面） ブロント少尉：「いやそれはどういう意味なんだ！？」 神妙な顔で礼をするチャーリー。 「このままでは、無垢なる美少女（熊）に疑いの目が向けられよう。”濡れ衣？”を晴らすためには拙僧が名乗り出ねばなるまい！！。なに、少し摘まんだのは事実ですし」 「動機が軽っ！」 「さらばです！　諸君！　拙僧は風のように現れ、風のように消える……この世の罪を一身に背負いし、聖なる盗賊――チャーリー・ウッド、ここに見参し、去る！」 彼はローブを翻し、夕日へ向かって去っていった―― ……なお、ブロント少尉の推理が完全に的外れだったことには、誰もあえて触れなかった。 「……まあ、野生動物ってことで、処理しとこっか」 その場を閉めるようにチェルキーが呟いた……