警部と憲兵（もどき）

ブロント少尉が、Kinnoya様のところの、百合警部と対決するようです。 ドローのようですｗ。 https://www.aipictors.com/posts/633799 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 朝焼けが海面を黄金色に染め、潮の香りが漂う。 百合警部はウォームアップのために首を回し、肩をほぐしていた。 長身の体躯にジャージ姿、足元のランニングシューズは使い込まれてはいるが、 きれいに手入れされている。 「……さて、そろそろ、来るかな。ブロント少尉。 一度お互いはっきりさせとかないとな。 体力勝負といくか」 その声は少し掠れていて、目付きは鋭い。 「お待たせしました！！警部殿！！」 少尉の声が響き、次の瞬間―― カツ、カツ、カツ。 埠頭に響く規則正しい革靴の音。 姿を現したブロント少尉は、なぜか戦前の憲兵を思わせる詰襟制服に軍帽、白手袋。 腰には黒塗りの鞘を差している。 ……ただし、よく見ると制服はやけにスタイリッシュで、細部の意匠が現代風。布地は妙に新しい。 「お前、それ……」 百合警部は目を細めた。 「勝負と聞きまして、警察と並び競うならばこれしかないと！」 少尉はきらきらと笑う。 腰のサーベルは重厚な金具が光るが、柄の握りは微妙に安っぽい。 「それ、本物か？」 「柄と鞘は本物っぽいですが、中身は竹光です！」 誇らしげに言う少尉。 「演劇部からパチ……借用しました」 「おい、いまパチって言っただろ」 「……気のせいです」 百合警部は額に手を当てた。 「今日やるのは体力勝負だぞ？　走るんだよ」 少尉は敬礼しながら答える。 「スリが出ましたか？ 痴漢ですか？　捕まえます！！　 警察には負けませんよ！」 「だからそういう勝負じゃねえんだって！」 百合警部の声が、朝の埠頭に響く。 通りすがりの釣り人が、こっそりスマホを構える。 憲兵風の少女と、ジャージ姿の警部。どう見ても訓練風景ではない。 百合警部は深くため息をつき、煙草を取り出して空を見上げた。 （こいつとまともに勝負しようとした私がバカだったな……） 少尉は腰の竹光を軽く叩き、にこやかに言った。 「では代わりに巡回に行きましょう！　街を守る勝負です！」 百合警部は煙草をもみ消し、心底疲れたような笑みを浮かべた。 「……はいはい、行くぞ」 二人の姿は朝靄に包まれ、埠頭からゆっくりと消えていった。