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アイピク島・真夏の午後にて
照りつける太陽が白い砂浜を焼き、海風さえぬるく感じられるほどの猛暑。 そんな中、ブロント少尉はブルマに白い体操シャツという出で立ちで、準備運動を終えると勢いよく掛け声を上げた。 「よし! 今からマラソンしてきます!!」 その姿を見つけた富士見軍曹は、思わず声を荒げた。 「少尉!? こんな炎天下に走るなんて正気ですか!? 熱中症で倒れますよ!」 しかしブロント少尉は振り返り、どこか得意げに胸を張った。 「大丈夫です! 私には秘策がありますから!」 そう言うや否や、彼女は腰の後ろに手を伸ばし――ブルマの裾に挟み込んでいたものを、誇らしげに引き抜いた。 ぱさり、と現れたのは明るい水色のベレー帽。 汗で湿ることもなく、陽光を受けてきらりと光る。 「ほら! ちゃんと帽子を被りますから!! これで熱中症対策も万全です!!」 得意満面の笑みを浮かべ、頭にベレー帽をちょこんと載せる少尉。 その姿はまるで、偉業を成し遂げた英雄の凱旋であった。 ……少なくとも、本人にとっては。 富士見軍曹は腕を組み、じっと少尉を見上げる。 その表情には、呆れと苛立ち、そしてわずかな諦めが入り混じっていた。 「……少尉。ベレー帽って、鍔も無ければ遮熱効果もありませんよ?」 「折りたためて携帯性バツグンです!!」 「……。倒れても、知りませんからね」 ため息混じりに言い放つ軍曹に、少尉は「勝った」とばかりのドヤ顔を浮かべる。 照りつける真夏の太陽よりも、二人の温度差の方がよほど眩しかった。
