1 / 3
シャーリーのアイシャドウ講座~悪女も清純美少女も~
「……チャーリー!? どこにいるんだ、チャーリーは……。あん、お前は!!」 リリスが声を張り上げると、濃い赤と黒のアイシャドウ、長く艶やかなまつげ、大胆なポーズを取るシャーリーが笑った。 「ふふっ、拙尼はシャーリーでございます♡」 その視線は狡猾で、大人びた色気を帯びている。 誰が見ても「悪女・美魔女」と思うほど完成度が高い。 「……ちょ、ちょっと待て!」 「ふふふ、少々お待ちなさいね」 呼び止めようとするリリスにシャーリーは片手を挙げると、カーテンの陰へと引っ込む。 少しの間姿が見えない。 ──そして、静かにカーテンが開くと、目の前に現れたのは、ブレザーに赤リボン、プリーツスカート、赤マント。薄いアイシャドウに柔らかな笑み。 完全に別人。 どう見ても、清純そうな……。 リリスの頭の中で、瞬時に光景が重なる。 ──幻視── 学園の中庭、春の陽光が降り注ぐ。 「おはようございます、私はシャーリー・クラウン、賢者の学院の一年生です!」 柔らかく手を振り、クラスメイトたちに笑顔を向けるシャーリー。 「どうぞよろしくお願いします♡」 リリスは頭の中で、邪悪で狡猾、妖艶な美女姿と、目の前の愛らしい学園美少女姿、さらに幻視の学園挨拶姿が同時に重なり、意識が混乱する。 「……ウソだろ……!」 悪女風から清純美少女、そして幻の学園姿へ──シャーリーの変身の完成度は、誰の目にも「信じられない」と映った。 「ほら、リリスさん。これが変装術の極みです♡」 現実に戻されたリリスは、思わず頭を抱えた。
