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通信訓練、そして…

アイピク島の夕暮れ。 ヤシの木の影が長く伸びる中、ブロント少尉は机に腰を下ろし、電鍵をカチリカチリと叩いていた。 真剣な表情、しかしどこか楽しげなリズムを刻む。 反対側――仕切られた部屋で、チェルキーは大きなヘッドフォンを耳にかけ、目を細めて集中していた。 手元のメモ用紙に鉛筆で文字を走らせる。 「ト…ウデイズ…ディナー…」 解読した長短の信号を、口に出して、メモ用紙に書き写す。 魔力の波が微かに耳の奥を揺らすように伝わってくる。 彼女の傍らの水晶も、通信のたびに淡く光った。 「これは長距離での最低限の連絡手段だ」 ブロント少尉が説明していた言葉を思い出す。 会話のように魔力を浪費せず、情報を最小限に削って送り合う。 確かに理屈は理解できた。賢者として、そしてドワーフとしても面白い技術だ。 しかし――。 チェルキーの鉛筆が、ある文を写し取った瞬間にピタリと止まる。 紙には、こう記されていた。 「キョウノゴハンハナニカナ ハンバーグガイイナ」 「……ッッッ!!」 次の瞬間。 ドンッ!!と隣の部屋のドアが勢いよく開かれた。 銀髪の熊耳少女プーにゃんが「え、なになに?」とついてきて顔をのぞかせる。 チェルキーは耳からヘッドフォンを乱暴に引き抜き、コードをぷらぷらさせたまま拳を握りしめる。 「ふざけるなあああああ!!!」 怒号と共に、チェルキーが赤くなった顔で突撃。 ブロント少尉は机に座ったまま、悪戯っぽい笑みを浮かべて彼女を迎える。 まるで「釣れたな」とでも言わんばかりに。 「まったく真面目にやれって言ったでしょうがっ!!」 「おいおい、通信だって大事な生活の一部だろ? 飯の希望を送るのは必須事項だ」 チェルキーの額には青筋、ヘッドフォンはぶんぶん振り回され、プーにゃんは「ハンバーグなら賛成だクマ~」と場を和ませる。 真剣な訓練のはずが、最後には大爆笑。 アイピク島の夕暮れ空に、三人の声が響いていた。

さかいきしお

コメント (29)

T.J.
2025年08月31日 06時55分
T.J.
2025年08月31日 06時55分
thi
2025年08月30日 13時56分
早渚 凪

軍隊はカレーのイメージ・・・あ、カレーライスにハンバーグを乗せればいいのか。カロリーエグっ

2025年08月29日 15時24分
M.T.
2025年08月29日 14時32分
ゆのじ
2025年08月29日 14時15分
五月雨

キュピーン!

2025年08月29日 12時37分
CherryBlossom
2025年08月29日 12時23分

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