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腕まくり必殺技(未遂)
体育館のバレーボールコート。 ブロント少尉は腕まくりを肩まできっちり上げ、ドヤ顔を浮かべていた。 「見よ! このスタイル……アイピク島で会得した秘奥義! ドライブタイガーシュートを今ここで解き放つ!」 観客席のギャラリーがざわつく。 なぜか、半そで体操着を更に腕まくりしてノースリーブに。 ブロント少尉の細身の腕が、一気に二回り以上太さに膨らむ(気がした) なぜかスパイクではなく助走してボールに向かっていく少尉。 その動作は――どう見ても蹴りを繰り出そうとするものだった。 「ちょっ……少尉!? それ、バレーじゃなくてサッカーだろ!」 「黙れ! バレーボールを蹴ることによって生まれる回転力が――」 その瞬間。 背後から飛来する鋭い影。 「バレーボールは、蹴るもんじゃない!」 富士見軍曹のクールな声とともに、華麗なハイキックが炸裂。 ガツン! という擬音と共に少尉の頭がはじけ飛ぶ。 「ぐわっ……!?」 倒れ込みながら頭を押さえる少尉。 観客が爆笑する中、彼女はぼそりとつぶやいた。 「……私の頭も、けるもんじゃないのでは……」 体育館に微妙な沈黙が流れ、次いで一斉にツッコミが飛ぶ。 「いやそこじゃないだろ!!!」
