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たい焼き演習
チェルキーは、野営用の鉄板を取り出しながらにやりと笑った。 「今日は特別に地球のおやつだよ。たい焼き。小麦粉の生地にあんこを包んで焼くんだ」 プーにゃんが目を丸くする。 「なんだかホットサンドみたいでおいしそうクマ~!」 「そうそう、地球は食べ物でも遊び心を忘れない文化があるんだよ」 そこへブロント少尉が駆け込んできた。 「糧食班長!ブロント少尉以下一名、集合しました!準備完了です!」 なぜか水着姿に銛を携え、軍人らしい気合十分で敬礼する。 チェルキーは首をかしげた。 「……少尉、なんで水着に銛?」 「はっ!たい焼きとは海を泳ぎ回る存在!捕獲のために水際戦闘用装備で臨むのが当然と考えます!」 プーにゃんが小声でつぶやく。 (……歌のなかだけだクマ) 二人の反応をまったくスルーとして、少尉は磯に突撃する。 「見つけ次第、捕縛する!」 数十分後。 ざば~と波を割って岩に這い上がる怪しい影。 「うなっ!!深き者!?」 勿論、水着姿に装具を付けた少尉だったが。 少尉が手にした銛には、巨大なタコと、ベルトには何匹もの魚・・・・・・。 「報告します!泳ぐたい焼きは発見できませんでした。しかし代わりに敵性タコを確保しました!」 「いや、それは……たこ焼きの材料じゃないか?」 結局、鉄板の上にはたい焼きと並んで、たこ焼きの鉄板まで用意されることになった。 プーにゃんは満足げに笑う。 「結果オーライくま!たい焼きと、この丸い、たこ焼きも美味しいクマ!! 両方たべられるなんて、しあわせ~クマ!」 ブロント少尉は胸を張って答えた。 「任務完了。おやつ確保に抜かりなし!」 こうして、たい焼きは泳いでいなかったが、タコはしっかり捕獲されたのであった。
