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写真とキツネとぬいぐるみ
ダキニラが性懲りもなく、狐巫女様に悪戯を仕掛けます。 シャーリーがお仕置きしておきましたのでゆるしてください ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 夜の帳が降りた神社。提灯の明かりが揺れる中、ダキニラは満面の笑みで、泣きそうな狐巫女様(金髪ボブの浴衣姿)に写真を見せつけていた。 「大変!!巫女様!!尻尾が九本あるよ!!」 ダキニラの手に握られた写真には、怖がるライバル巫女様の姿と、彼女の金色の尻尾が九本に見えるほどぼやけた残像が写っていた。 それは、ダキニラがシャッタースピードを落としたフィルムカメラで、自分の高速な尻尾の動き(スカウト技能の賜物)を撮影し、そこにライバル巫女様の姿を二重露光で重ねた、巧妙なトリック写真だった。 「ひぃぃぃっ!そんなぁ……わ、私の尻尾が……九本も!?あばばば……」 ライバル巫女様は、射影機を胸に抱きしめながら、写真の「真実」に打ち震えていた。 陰陽道系の魔法を操る彼女でも、カメラが捉えた物理的な「証拠」と、九尾という伝説級のリソース外の脅威に衝撃を受けてしまう。 「いやですわ~。でも大丈夫!このダキニラが、貴女の心労という不幸を、見事!! 解決して差し上げますわ~」 ダキニラはあくまで上品な巫女を装いながら、尻尾を揺らしながらほくそ笑む。 とっ、そこに、背後からシャーリーの声が飛んだ。 「ふひひ、ダキニラ殿、あまり悪辣な商売をすると、天罰が下るのでござるぞ!」 ドカッ! 鈍い音と共に、ダキニラの頭に大きなコブができた。シャーリーの拳だ。 「いったぁ!何すんのよ!!シャーリー!?」 「拙尼は幸運神の巫女!不幸を呼ぶ悪さは見過ごせぬでござる!それに、あんなに泣かせたら、幸運神様もご機嫌斜めになるでござるよ!」 シャーリーは(表面上は)幸運神の教義を守るべく、ダキニラの「悪意に見えるイタズラ」に物理的な制裁を加えたのだ。 「まったくもう……仕方ないわね……」 頭のコブをさすりながら、ダキニラは諦めたようにため息をついた。 「はい、これ」 そう言ってダキニラが取り出したのは、フカフカで可愛らしい九尾の狐のぬいぐるみだった。 どこから持ってきたのかは不明だが、その顔は愛嬌たっぷりで、九本の尻尾が丁寧に作られている。 「この子は、巫女様を九尾の呪いから守る、幸運のお守りですわ。なにかまた、困ったことがありましたら、このダキニラがとこの子が解決して差し上げますからね」 泣いていたライバル巫女様は、そのぬいぐるみを恐る恐る受け取ると、そのあまりの可愛さに目を丸くした。 「あ……ありがとうございます……っ!」 彼女はぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。九尾の呪いへの恐怖は、まだ完全に消えたわけではないが、この可愛らしいお守りが、彼女の心を少しだけ軽くしてくれたようだった。
