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サインとポン ~論理の崩壊点~

士官宿舎 分室・午後 分室の壁に設置された大型プロジェクターには、午後のニュースが流れていた。画面中央では、某大国の巨体でふてぶてしい大統領が、条約の調印を終えたばかりの豪華な万年筆と文書を、記者団に向かって自慢げに見せびらかしている。 その手前、分室の中央では、ブロント少尉が自前の万年筆を握りしめ、熱弁を振るっていた。 ブロント少尉:「少佐殿の言う**『効率性』は理解するであります! しかし、条約の調印や誓いの署名には、効率性とは別の論理が宿る!この万年筆で刻まれた筆跡には、署名者の『心意気』が三倍込められるのであります!これはカオス環境下で最も頼れる兵器**であります!」 彼女の熱気に合わせるかのように、背後のプロジェクターの大統領が、まるで少尉の主張に同意するかのように、ニヤリと笑い、タイミングよく親指を立てる(サムアップ)。 その隣に立つリゼット少佐は、この光景を直視し、硬直していた。彼女のスマートグラスは、ブロント少尉の**「心意気」と「万年筆」の結びつきに加え、大統領の非論理的な承認という新たなカオス変数**を取り込み、処理能力の限界に達していた。 リゼット少佐(内部演算ログ):「**エラー!カオス変数、閾値超過。**大統領の『サムアップ』は、轟少尉の非論理的主張を『最高権威』によって『公的に肯定』**したことを意味する。論理的整合性の再計算、不可能。全システム、フリーズまで3秒──」 リゼット少佐:(目を見開いたまま)「……ストップ……!」 少佐の悲鳴にも似た言葉が発せられる寸前、静かで、しかし決定的な音が響いた。 「ポン。」 分室の手前、書類の山に囲まれたデスクに座る富士見軍曹は、26歳、小柄で黒髪ボブという可愛らしい外見とは裏腹に、究極のクールさを保っていた。彼女はブロント少尉の熱弁にも、大統領のサムアップにも一切関心を払わず、粛々と備品購入申請書に印鑑を押していた。 軍曹のその行動は、「情緒」「儀式」「権威」といった全てのカオス要素を一瞬で無力化する、「実務的な効率性」という無敵の論理を具現化していた。 リゼット少佐(内部演算ログ):「LOGIC RESTORED!(論理回復)……**押印:ワンアクションで完了。**署名と比較し、効率性98.7%。情緒的価値はゼロ。故に、日常業務においては最強の論理……」 フリーズ寸前だった少佐のシステムは、**富士見軍曹という名の「絶対的な効率の天使」**によって救済された。 ブロント少尉は、軍曹の**「ポン」**という行為に一瞬言葉を失い、自分の万年筆と、大統領のサムアップが映るプロジェクターを交互に見た。 ブロント少尉:「あ、あの……軍曹殿!これ、備品の申請でありますか!?」 富士見軍曹:(書類を積み重ねながら、クールな表情を崩さず)「はい。効率化のため、万年筆よりも印鑑を推奨します。次期申請から、署名欄も押印で代替可能と、論理的に承認します。」 富士見軍曹のこの**「事務的な独断」こそが、リゼット少佐にとって万年筆と印鑑の使い分けという、分室の新たな論理を確立する決定的な瞬間**となったのであった。

さかいきしお

コメント (24)

しぃろ@リィルゥ&桃音&れもん
2025年10月26日 09時26分
凪月 (NATSUKI)
2025年10月25日 13時06分
thi
2025年10月23日 14時38分
ガボドゲ
2025年10月23日 01時04分
Ken@Novel_ai
2025年10月22日 21時28分
みやび
2025年10月22日 18時19分
よ~みん
2025年10月22日 14時39分
もぐっちー(mogucii)
2025年10月22日 14時09分

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