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サイボーグと心意気
リゼット少佐が静かに分室に入ると、中央の会議テーブルの上には、黄色い警戒色の**強化外骨格*の試作機が鎮座していた。 リゼット少佐: 「今回の検証考察演習はサイボーグについてだ。目の前の機体は、統合荷重支援システム、略称ILASS(イラス)。人間の脆弱性を機械で補強するという、論理の極致を検証する」 ブロント少尉は敬礼する。 ブロント少尉: 「イラス! 了解であります!このイラスをもって、わたくしの心意気をさらに高めます!」 御宅参謀: (興奮しきった様子で、少佐の横に詰め寄りながら) 「サイボーグ! ついに来ましたな、シャドウランの世界も近しです!! 少佐! このカオスローダーが、エッセンスとサイバーウェアの非論理的な相殺作用を解明します!」 少佐のスマートグラスが一瞬赤く点滅し、御宅参謀の横に「用語の論理的逸脱:カオスローダー」という警告が表示された。 御宅参謀: (外骨格を撫でながら、ぼそっと) 「それに、失敗すると、広報部の評価が下がり、ガンプラ購入資金、もとい分室の予算が減ってしまいます……」 さらに少佐のスマートグラスがちかちか点滅し、「私的利益の論理的混入」という警告を静かに表示した。 リゼット少佐: 「御宅参謀。そのファンタジーな用語と、非公式な蔑称の使用を禁ずる。正式名称はILASSだ。若菜少尉、装着し、その実用的な論理を評価せよ」 若菜少尉: (目を輝かせて) 「カオスローダーって、なんか強そうで、悪そうでカッコいいですね!」 リゼット少佐(内部演算ログ): データ:若菜少尉、カオス変数に肯定的感情を抱く。……論理的処理:カオスローダーの広報的イメージは、兵士の情緒に感染しやすい。危険。 若菜少尉は、ILASS(イラス)に乗り込み、訓練用の重い物資を軽々と持ち上げた。 若菜少尉: 「わっ、すごい、重さ全然感じない!!これ、倉庫整理に使うんですか!」 御宅参謀: (少佐に小声で進言する) 「やはりカオスローダーは、実態がフォークリフトというカオスを抱えています! 次は轟少尉の異常なまでの肉体制御能力と、機械の論理の適合性を検証しなければ、企画がフリーズしますぞ!」 リゼット少佐: (無視できないカオスに苛立ちを覚えつつ) 「轟少尉。貴官の肉体制御の論理と、ILASSの機械の論理を融合させよ」 ブロント少尉は(ブルマ姿で)ILASSに乗り込み、「イラスのカオスと心意気の融合であります!」と叫び、動作を開始した。 当然、少尉の超高速な意志に対し、ILASS(イラス)の油圧制御は0.1秒の遅延を生み、動作がギクシャクする。 ブロント少尉: 「ぬっ!イラスが!反応が鈍いであります!わたくしの心意気のスピードに、このイラスの論理が追いついていない!」 「ええい、イラっとします!!」 苛立ちが頂点に達した少尉は、ILASSを背後の壁に乱暴に脱ぎ捨てた。 パイプが千切れ、機体は音を立てて崩壊する。 「クレセントカッター!!」 そして、生身の少尉は、爆発的な飛び内回し蹴りで標的のコンクリートブロックを粉砕した。 背後になぜか、白く輝くルナの残像が浮かんだ(気がした) 御宅参謀: (歓喜のあまり跳ね上がり) 「うおお!これがカオスローダーの真の力! エッセンスの強大さが、カオスローダーの機械の論理を物理的に破壊した! 規格外のデータ!カオス三倍です!!」 リゼット少佐: (崩壊した機体と、内回し蹴りの衝撃波を見比べ、スマートグラスに「論理的最適解:ILASSの性能は、轟少尉の心意気未満」と表示される) 「……ILASSは、ロジスティクス部門に回す。そして、論理的な広報資料を作成する」 リゼット少佐が論理的敗北を受け入れた直後、御宅参謀が再び**「ビキーン!!」**という高周波音と共に立ち上がった。 御宅参謀: (少佐に向かって指を突きつけ、熱狂的な表情で) 「少佐!広報の画像どうするんですか!このままではカオスローダーは倉庫のフォークリフトという論理が通ってしまいます! 広報部が臍を曲げると、ガンプラがかえ、もといカオス対策という我々の任務に支障が!!」 そこで、三宅参謀の眼鏡が怪しく光る 「今は、カオスローダーは倉庫整理しかできない!!しかし、いつの日か必ず理想のサイボーグ兵士が誕生する!!そのイメージを植え付けるのです!! ちょうど、リゼット少佐がストリート女サムライのコスプレをすれば、イメージ的にぴったりです!」 若菜少尉: 「わあ!少佐のカオスローダーのコスプレ!絶対カッコいいです!」 ブロント少尉: 「イラスのカオスローダーコスプレ!少佐の心意気が三倍になるであります!」 リゼット少佐(内部演算ログ): データ:ILASS、カオスローダーという蔑称が正式に定着。 若菜少尉、轟少尉、共に論理的指導を拒否。……論理の核:自己否定コマンド受信。 リゼット少佐: (顔を覆い、絞り出すように) 「……その、コスプレの画像はCGで作成し、轟少尉の視覚に触れさせないという、論理的な安全措置を設けることを条件とする……そして、名称はILASSだ。決してカオスローダーではない」 御宅参謀: (歓喜し、大声で) 「マームイエスマーム! カオスローダーの広報画像、承知しました!」 こうして、リゼット少佐の個人的な論理的尊厳は崩壊したまま、カオスローダーという蔑称が、分室の公式文書に載る日も近いと予感させた。
