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閃光のミラージュ【月下のゴールデン・エージェント】
満月が照らす市街地の屋上。 その上に、蒼いチャイナドレスを翻しながら立つひとりの女性——劉妃。 彼女の手には、宝飾品のように輝く黄金のハンドガン。 その銃口は、まるで月光を吸い込むかのように静かに光っていた。 「さて……遊びの続きといこうかしら?」 これは任務でも暗殺でもない。 友人から押し付けられた、**“スパイ系VRショーの特別出演”**という名の気まぐれな余興。 本気を出す必要のないミッション——そのはずだった。 しかし、劉妃が一歩踏み出すたびに、青い布と銀髪が華やかに舞い、 観客席のAIオーディエンスが沸く。 彼女自身も、その盛り上がりに思わず口元を緩めていた。 「見とれてる暇はないわよ?」 黄金の銃口が、観客に向けて遊びの一撃を放つ。 光のエフェクトが夜空を切り裂き、まるで月の軌跡と交差するように煌めいた。 ステージの後半、仮想空間は都市から静寂の高原へと変わる。 満月を背にした劉妃は、軽やかな足運びで前に出ると、 優雅な微笑みを浮かべながら黄金の銃を構えた。 その姿は、美しさと危険さが同居する“月下の幻影”。 青いドレスの装飾が光を拾い、彼女をより妖麗に見せていた。 「逃げるの? 追いかけるの? ——どちらでも、私は楽しめるけれど」 観客向けの台詞だと分かっていても、 その声音には不思議な説得力と余裕があった。 ゲーム内のターゲットが現れるや、 劉妃はため息一つつかず、滑らかな動きで銃を振り抜く。 黄金の弾道は月明かりのように直線を描き、 一瞬で敵影を霧散させた。 ミッション完了の表示が浮かぶと、 劉妃は肩をすくめながら笑った。 「ふぅ……たまには、こんな茶番も悪くないわね」 それは、普段では決して見せない—— ほんの少しお茶目で、どこか楽しげな劉妃の、月夜だけの表情だった。
