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首を傾げてバーベキュー
ビーチに突如として降り立った黒軍服の少女――ブロント少尉が首をかしげると、島の空気がほんのりざわめいた。 「……また、誰か来たクマ~」 プーにゃんが焼き肉が大量に盛られた皿を持ちながら、もぐもぐと呟く。 チェルキーは真面目顔で少尉に近づき、目を細めた。 「この人、見かけによらず……なーんか“空腹オーラ”が強いな。あのときのチャーリーと同じ波動を感じる……!」 そんな折、波打ち際に紅の光がきらめいた。 「おや、また島に珍妙な客人が流れ着いたようじゃな」 陽光を受けて虹のようにきらめく輪を頭上に浮かべ、赤いアロハにギターを担いだまま、砂浜を歩いてくる。 その姿はまるで「休日中の神格存在」である。 「予は魔王。この島に仮の城を築く者なり。……ふむ、鉄と硝煙の香り、なかなか良い匂いよ。そなた、名は?」 ブロント少尉はびしっと直立不動で敬礼した。 「マ陛下!! 名乗るほどの者ではございませんが、帝国自衛陸軍所属、ブロント少尉であります!!」 「なんじゃその謙虚な物言いは。予の前では堂々とせよ。気に入ったぞ」 「わかりました。堂々とします!!」 そのとき。 「チュンチュン!!(やばい予感がするチュン!!)」 バーベキューの焚火の近く、熱いのに日向ぼっこでもするかのように、地面に座っていた白雀が、 少尉の視線に気付き羽をぱたつかせて逃げようとする。 「あっ、あのクッション、また逃げようとしてますね。回収します」 「ちがーう! あれ鳥! 食べ物じゃないからね!!」 レイちゃんがあわてて砂浜の岩陰から飛び出してくる。 「あら、少尉?今日はブルマじゃないのですわね。何の訓練かしら? 無人島に来てまで非常食を狙うなんて、お茶目ですこと♪」 ブロント少尉はレイちゃんを一瞥してからうなずいた。 「見知った顔がいるとは思いませんでした。安心感からか、クッションを抱きたくなりました」 「だから、それは――!」 「チュン……(またこの人かチュン……)」 ** ひとしきり騒いだあと、チェルキーはため息混じりに串に刺された肉を手渡す。 「落ち着いてからでいいよー、食べてね。ちゃんとした食べ物」 「クマ耳付きクッションじゃないクマ~。バーベキューつづけるクマ~」 「焼きそば追加でーす♪」 エルフさんが大皿を持って走ってくる。頭の上の黒猫が「さかな!さかな!」と連呼していた。 「とったど~!」 うみから、サメを捕まえた、黄金色の髪のクマ耳少女が上がってくる ** 魔王さまはギターをかかげ、陽気に笑った。 「うむ、これもまた“縁”よな。」」 ** 潮騒をBGMに、炭火のパチパチという音がリズムを刻む。 焼かれているのは、分厚い肉、海辺で獲れた魚、野菜、串焼き……。 あたりには、じゅうぶんに「うまそうなにおい」が満ちていた。 そしてまた、島の一日が始まる――。 お騒がせで、どこか優しくて、ちょっぴり腹ペコな仲間たちとともに。
