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その正体、見せてもらおうか!!
浜辺の陽光が白砂を照らし、潮風が心地よく吹き抜ける中——。 ジャンヌ風の白銀甲冑に身を包み、背に煌びやかな旗を背負って堂々と現れたのは、ブロント少尉だった。 「見よ! 我が麗しき英傑の姿を! この姿こそ、正義の証——ジャンヌ・ド・アルケイン少尉モード!」 そのポーズは完璧だった。キラキラと砂浜に立ち昇る陽光すら味方につけたように輝く金髪ポニーテール。しかし、その表情はどこか誇らしげというより、「ちょっと照れている」ような妙な角度である。 そんな彼女に割って入るように、黒の法衣に身を包み、片眼鏡を光らせて現れたのは、謎の神父風男・チャーリーウッドであった。 「おのれ、魔女と悪ぶる聖女め! その正体を皆にさらしてくれる!」 彼は空中で両手の短剣をクロスさせ、銀の刃で大きく十字を切ると、頭上に聖なる光が瞬いた……ように見えた。 「待て、チャーリー、それはお前の演出だろう!」と誰かが遠くから叫んだが、もはや止められない。 二人の奇抜なヒーロー(?)ごっこに周囲の空気がピリつく中—— 「……うるさい」 ナコルル風のチェルキーが、無言で長柄のグレイブ(刃引き済)をゆっくりと構える。そして。 ドゴォォン! 凄まじい音と共に、チャーリーとブロント少尉は、浜辺の向こうへと見事に吹き飛ばされた。 「峰打ちです」と呟くチェルキーの後ろで、プーにゃんがぽかんと口を開けていた。 その数秒後、砂浜に突き刺さるように落ちたふたりのヒーロー(仮)は、完璧な『大の字』で白目をむいていた。 「……ヒーローとは、なんなのだろうな」 「知らない」 誰ともなく、浜辺の空に問いかけた。
