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折り紙免許と異世界交流
朝の浜辺。潮騒の音が静かに響くなか、ブロント少尉は厳かに正座していた。白と赤の巫女服に身を包み、背筋をぴんと伸ばし、青い瞳に凛とした光を宿す。 その手には一枚の厚紙。封蝋のように花模様のシールが貼られた封書――彼女の手作りである。そして背後に控える木刀。その柄を後ろ手に抱える仕草は、明確な非戦の意思表示。 「……来るぞ。身を慎め」 緊張した面持ちのブロント少尉の言葉に、後方で見守っていたチェルキー、プーにゃん、チャーリーウッド、リリスがそれぞれの宗派(?)に則った礼儀正しい姿勢で佇む。 「ねえ、これって……紙の工作、じゃなくて、武道の免許?か何かの授与式だとでも思ってるのかしら」 リリスがそっと耳打ちすると、チェルキーがふっと笑って囁き返した。 「まぁ、どこかで“折り紙免許”って聞いて、武芸に近いもんだと思ったんじゃない。放っとこう、本人が誇らしげだしな」 その時、波打ち際から一人の女性が歩いてきた。黒髪のボブカット、小柄で可憐な和服姿。手には丁寧に折られた色とりどりの紙の束。 「おまたせしました、皆さん」 富士見軍曹だった。気品と柔らかな笑みをたたえた佇まいは、まさに旧家の教養ある令嬢そのもの。 「師匠……いや、富士見軍曹殿! 本日このような栄誉を賜るとは、感無量!!」 ブロント少尉は左手の封書を差し出し、深く頭を下げた。 「こ、これを……師の御手に!」 「え? あ、ありがとうございます……?」 軍曹は少し戸惑いながら封を受け取ったが、中を開けると――そこには“わたしにきりがみのめんきょをください”と、殴り書きのような筆致で書かれた手紙が一枚。 (ああ……) すべてを察した富士見軍曹は、微笑みながら紙鶴を一羽、そっと手のひらに載せてみせた。 「こちらを、免許として受け取ってください。あなたの“切紙”は、きっと人を繋ぐものになります」 「うおおおお……!! これは、折神の技ッ……ありがたき免許、拝受いたしたッ!!」 ブロント少尉、感涙。 異世界組の誰もがそっと顔を背け、でも笑顔だった。誰も「折り紙と切紙は違うよ」とは言わなかった。なぜなら―― 「これ……すっげぇ細かく折ってあるクマ。プーにゃんも挑戦していいクマ?」 「もちろんですッ!」 こうしてその場は、折り紙を囲んだ異文化交流の輪へと変わっていったのだった。
