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黒タイツの誤算

アイピク島、正午——。 灼熱の太陽が照りつける白砂の浜辺。灼けるような空気のなか、ブロント少尉は軍服の襟を正し、黒タイツの脚を高く振り上げていた。 「……これが、士官学校式・全身協調型ブラジリアンキックです!」 空を裂くようなスナップ。足の甲が打点に向けて鋭く落ちる。 まるで教範に載せるべき完璧なフォーム。スカートの裾がひるがえるたび、陽炎が揺れた。 近くで見ていた富士見軍曹は、しばらく無言で腕を組んでいたが……不意に、じっと少尉の脚元を見つめた。 「……少尉?」 「なんでしょう軍曹。今のフォーム、我ながら惚れ惚れしますな!」 「その、黒タイツ。暑くないんですか?」 「む……!? 暑いのは確かですが、これは精神統一ですな。身を引き締めるということは、即ち心身をも引き締めるということに他なりません! 脚を覆う黒が、闘志を昇華させるのです!」 「……」 「つまりこれは、防暑ではなく防心——」 「はいはいもういい。ちょっとこっち来なさい少尉」 「なっ!? 軍曹、私は今からフォロースルーの練習が——うわ、何を……!? や、やめたまえっ、く、靴下ではない!これは防心の! これは誇りの装備なのだー!」 富士見軍曹は無言で少尉のタイツをくしゅくしゅと足首まで引き下ろす。 案の定、そこにはぷっくり腫れた太もも。見るからに刺された跡。 「……やっぱりね。こんなことだろうと思った」 「ぬ、ぬぅう……さ、些細な問題です。こんなもの、蹴りの威力には影響ありませ……っつぁっ!?!?!?」 軍曹が無言で軟膏を塗る。塗り方は優しいが、目は呆れている。 「……まったく、黒タイツで誤魔化すより、虫除けを先に塗るって発想はなかったの?」 「……思いつきませんでした……うぅ……」 炎天下の砂浜。 体育座りで泣きそうな顔のブロント少尉と、そばでしゃがみ込む富士見軍曹。 ミニスカートの裾が風に揺れ、タイツは足元で脱げたままだった。 そして今度は、真っ赤に日焼けしたふとももに、もう一つの軟膏が差し出される。 「……ついでに日焼け止めも塗っとくから、大人しくしなさい」 「……了解……しました……」

さかいきしお

コメント (14)

白雀(White sparrow)

キックの解説絵がなんかすごい

2025年07月31日 12時56分
T.J.
2025年07月31日 12時45分
クマ×娘 D.W

無人島で害虫とは厄介よの~w

2025年07月31日 11時16分
gepaltz13
2025年07月31日 02時47分
翡翠よろず
2025年07月30日 23時44分
Ken@Novel_ai
2025年07月30日 22時24分
えどちん

虫は侮れないのです

2025年07月30日 20時42分
えどちん

虫は侮れないのです

2025年07月30日 20時42分

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