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天への敬礼
アイピク島、白い砂浜。 太陽が真上から照りつけ、砂がまぶしく光る。 ブロント少尉は真剣な面持ちで空を見上げ、右手を額に添えて敬礼を繰り返していた。 富士見軍曹が苦笑混じりに声をかける。 「少尉、誰に向かって敬礼してるんですか? 空にでも礼を尽くしてるつもりですか?」 少尉は静かに答えた。 「軍曹、地に足を着けて生きる以上、天に見守られていることを忘れてはならないと思いまして」 軍曹は眉をひそめて言う。 「おてんとうさま気にするのはいいけど、その奇妙な敬礼、周りの人に見られてますよ。気をつけてくださいよ」 少尉はふと気づいたように微笑み、もう一度敬礼した。 その頃、宇宙から見つめる衛星の、管制室。 偵察衛星のモニターに映る少尉の姿にオペレーターたちは騒然としていた。 「やばい、あの敬礼……完全に気づかれてる!」 「すぐに撮影中止しろ!」 映像の中の少尉は口を動かす。モニター越しに、まるで「次はそっちの番だ」と伝えられたかのように見えた。 オペレーターたちは固まってしまい、慌てふためく。 「これはまずい、完全に発覚した!」 管制室は一瞬の静寂の後、無言のまま微妙な空気に包まれた。 しかし実際の少尉の言葉は―― 砂浜で敬礼しながら、ふと少尉は呟いた 「……お腹空いたな。ごはんなにかな」 富士見軍曹は苦笑いを浮かべながら少尉の背中を見送った。 「まあ、敬礼は好きにしてください。食事に感謝するのは大事ですからね。 でもまあ、周囲の視線も気にしてくださいよ」 少尉は無邪気に空を見つめ、ふわりと答えた。 「はい、わかりました」
