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ラジカセを振り回し 「森のくまさん」戦闘
古びた倉庫の奥。 ぷーにゃんが埃まみれの棚をあさって、ひょいと何かを抱えて出てきた。 「すごいクマ! なんかキラキラしてる箱クマ!」 ブロント少尉はそれを一目見て、迷わず言った。 「……ラジカセだね」 「らじ…かせ?」チェルキーが首をかしげる。 少尉は短く答える。 「中に音楽が入ってる機械だよ」 それだけで十分だった。ぷーにゃんは耳にイヤホンを差し込み――ぱぁっと顔を輝かせる。 「すごいクマ!! 頭の真ん中で歌が聞こえるクマ!!!」 チェルキーは目を丸くして、少尉はすこし微笑んだ。 帰途の森。モンスターの群れが突如現れ、道をふさぐ。 ぷーにゃんはラジカセを抱えたまま、イヤホン越しにご機嫌に鼻歌を漏らしていた。 「♪あるーひ、もりのなかー、くまさんにー、であーったー♪」 そして、右手には金色のビーストクロー。 「いくクマー!」 ラジカセを振り回しながら、モンスターに突っ込んでいく。 少尉は冷静に指示を飛ばし、チェルキーはグレイブを構える。戦闘は混乱の中に始まった。 だが、その最中。 ――ぷつん。 イヤホンがラジカセから外れた。 次の瞬間。 ラジカセのスピーカーから、全力の大音響が森に響き渡った。 「♪あるーひ、もりのなかー……♪」 あまりに唐突な大合唱に、モンスターたちは一斉に硬直。 そして、悲鳴を上げて四方八方へと逃げ散っていった。 戦場に残ったのは、ぽかんとするチェルキーと、肩をすくめる少尉。 そして、ラジカセを抱えてご機嫌なぷーにゃんだった。 「やっぱり音楽はすごいクマ!!」
