魔法造形工房の午後
チェルキーは、学院の工房にある巨大な魔導装置の前にしゃがみ込んだ。 手に持つ羊皮紙には、アイピク島で見たブロント少尉の似顔絵と、彼女を忠実に再現するための術式がびっしりと書き込まれている。 「よし……いよいよ、少尉フィギュア、完成間近だね……!」 小さな体を精一杯伸ばして、チェルキーは装置の透明なシールド越しに中を覗き込む。 半分のサイズとはいえ、そこに立つ少尉はまるで生身のように精緻で、金髪のポニーテールは光を反射して輝いている。 装置の中で、青白い光が輪切りのように走る。 何条もの光が上下にスライスを描きながら、少尉の上半身を形作っていく。 下半身はまだ生成途中で、魔法光の層が幾重にも重なっている。 まさに、魔法と技術が混ざり合う魔導立体転写装置の精密な動きだ。 「ふふ……やっぱり、少尉は美人さんだなあ」 思わず呟いたチェルキーの目が輝く。 完成が近づくにつれ、立体的な影や制服の細部まで見えてくる。 黒い軍服のプリーツスカートや手袋、ブーツまで、すべてが半精霊的な魔法光で再現されていた。 「ここまで来たら……最後の魔法発動だ!」 チェルキーは深呼吸し、術式を再び書き込んだ羊皮紙を軽く振る。 装置の中の光が一層強くなり、スライス状の光線が幾条も駆け巡る。 空間に漂う魔法陣が微かに震え、最後の形状が積み上がっていく。 「うん……完璧!」 チェルキーは小さくガッツポーズをして、装置越しに半完成の少尉フィギュアを見下ろす。 目の前の小さな像は、ただの模型ではない。 アイピク島での少尉の存在を、次元を超えて固定化する、魔法と意識の結晶だ。 「これで、アイピク島の接続も、少尉の思いも、ちゃんと守れる……よね」 チェルキーの頬がほんのり赤くなる。 外部協力者としてのレポートは大変だけど、この瞬間だけは、魔法と技術の成果を心から誇らしく思えた。
