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アイピク島通信外伝:銅鑼焼き騒動
「ねぇチェルキー……またあの、まるくてあまいの食べたいクマ」 ぷーにゃんが耳をぴこぴこ揺らしながら、机に突っ伏す。 「どら焼きっていったっけ?」 「そうクマ! 前に少尉が持ってきてくれたやつ! あれ、また食べたいクマ!」 チェルキーは首をひねり、羊皮紙をめくりながら唸る。 「料理の秘伝にも、賢者の文献にも載ってない……」 困った末、美食の女神デリシアへ神託を請う。 舞い降りた言葉は―― 《食道 汝一人 食の輪 共に》 「……あいかわらず謎すぎる!」 (忙しくてテキトーに投げられたな……) 仕方なく、例の暇そうな少尉に電信を送ってみた。 📡 受信(少尉→チェルキー) 【電信第壱七号】 発信者:少尉 宛先:チェルキー 菓子名 ドラヤキ 小麦粉卵砂糖蜂蜜調合生地 両面焼 二枚 間ニ餡ヲ挟ム 名称由来 形状 銅鑼ニ似ル為 以上 「……銅鑼に似る? そういうことね!」 チェルキーの目がきらりと光る。 数時間後。 広間に据えられたのは、直径一メートルを越す銅鑼サイズの巨大どら焼きだった。 ふわふわ生地にぎっしりの餡――その存在感は圧巻。 ぷーにゃんは瞳を輝かせ、両手を広げて突撃した。 「いただくクマァァ!」 ……数刻後。 大どら焼きは跡形もなく消え失せ、ぷーにゃんは満腹でおなかを丸めて畳にごろん。 「ふにゃぁ……しあわせクマ……」 すぅすぅと寝息を立てるその姿は、まさに「お腹いっぱいのクマ」そのものだった。 チェルキーはあきれ顔でため息をつく。 「わたしでも食べきれないに、結局ほとんど一人で食べちゃったか……」 外界へ送られる次の軍報には、こう記されるだろう。 《アイピク島 銅鑼焼 一名他一名にて完食 余剰補給無シ》
