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ブーツは兵士の心意気
リゼット少佐は、スマートグラスを輝かせ、軍規に則った指導を始めようとしたところで、視界に飛び込んできた光景に硬直した。 金髪ポニーテールのブロント少尉は、規律正しいジャングルブーツを履きこんでいる。そこまでは論理的だった。 しかし、少尉がブーツのと共に着用していたのは、紺色のブルマと体操着だったのだ。 口元には満面の笑みが浮かんでいる。 「さあ、はしるよ~」 少佐は頭痛を堪えるように片手で額を押さえた。 機能性と規律を象徴するブーツが、情緒と逸脱を象徴するブルマと最悪の論理的矛盾を形成している。 「なっ、なんですか少佐? じっと見て」 「轟少尉!その組み合わせは機能的に破綻し、軍規的に最悪のハザードを発生させている!**『心意気』**とは、服装の可愛らしさで表現されるものではない!」 少佐の論理的な悲鳴が響き渡る中、傍に立っていた若菜少尉が、その情緒的な輝きを放つ少尉の姿に、素直な感想を漏らした。 「でも、可愛くてカッコいですね。ちょっと恥ずかしいけど」 若菜少尉の純粋な情緒的肯定は、少佐の論理的な怒りを完全に無効化した。 ブロント少尉は、自分の行動が論理的に正しいと証明されたかのように、さらに胸を張る。 「ハッ!そうであります!心意気が一番出る格好でブーツを履くのが論理的!」 少佐のスマートグラスには、「カオス優位性100%」というエラーメッセージが表示されていた。 少佐は、もはや反論する論理的なエネルギーを失い、静かに自室の猫カフェ画像を脳内再生し始めた。 「…富士見軍曹。本日の訓練内容は、轟少尉の『心意気』による非論理的ジョギングの経過観察に変更します。」 こうして、対カオス分室の訓練は、ブルマ姿でジャングルブーツを履いた少尉が、軍規と論理を置き去りにして走り去る、という出オチで幕を開けたのであった。
