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森の昼餉 ―怪人赤ずきん、狼に挑むの巻―
森のせせらぎが、光を跳ね返すようにきらめいていた。 ぷーにゃんとケティーは、小川のほとりで魚を焼き、腹をすかせた子狼たちに少しずつ分けてやっていた。 「こっちの子は小さいくまね。焦げたとこは取るくま」 「にゃ~、こっちの子はお行儀いい子にゃね。はい、あーん」 子狼たちは警戒心を解いて尻尾を振り、魚をくわえてもぐもぐ。 ケティーは頬を緩め、ぷーにゃんも満足そうにうなずいた。 ――その穏やかな空気を、草むらの奥から妙な笑い声が切り裂く。 「ふひひ……狼ちゃ~ん、赤ずきんさんの登場でござるよ~♡」 「……なんか来たくま」 「……嫌な予感がするにゃ」 茂みをがさがさ揺らしながら、赤いマントを羽織った長身の怪人、もとい女学生姿が現れる。 黒髪を風に流し、フードを深くかぶったその姿―― 正統派美少女の見た目に反して、言動はもはや怪人である。 「ふひひ……狼ちゃ~ん、恐れるでない。拙尼はただの――」 「どつくまー!!!」 ばしんっ! シャーリーの身体が、きれいな放物線を描いて飛んでいく。 だが、本人は転がりながらもすぐに立ち上がり、砂埃を払いながら叫んだ。 「な、何をするでござるか!? 危ないでござる!」 「シャーリーが危ないクマ! 狼、びっくりしてるくま!」 「びっくりするのはこちらでござる!」 狼の子たちは、尻尾を下げてぷーにゃんの後ろに隠れた。 一方、ぷーにゃんの後ろではシャーリーが「反省してるでござる」とぶつぶつ言いながらバスケットを広げる。 「まあよい、せっかくだから共に食すでござる。ふむ……お肉もあるでござる」 シャーリーが取り出したのは、焼き目のついた骨付き肉。 その香りに、子狼たちが再び興味を示す――そして、森の奥から低い唸り声が響いた。 大きな灰色の母狼が姿を現す。 その眼光は鋭いが、どこか理知的でもあった。 ケティーが緊張し、ぷーにゃんが微かに食事の手を止めた。 しかし、シャーリーは、まるで旧知の友にでも会ったかのように微笑む。 「おお……母上か。お肉いかがでござる?」 まったく動じることなく、そっと肉を差し出す。 母狼は少し鼻を鳴らしたあと、静かに歩み寄り、それをくわえ取った。 子狼たちがうれしそうに鳴き声を上げ、ぷーにゃんも笑う。 「……仲良しになったくま」 「当然でござる。食卓を囲めば、皆、友よ」 「チェルキーみたいなことを言うクマ」 その言葉どおり、三人と狼たちはそのまま草の上に並び、 焼き魚と肉と果実を分け合いながら、穏やかな昼餉を楽しんだ。 母狼は去り際、シャーリーの手をぺろりと舐めていった。 その舌の温かさに、シャーリーは一瞬目を細め、満足げに呟く。 「ふふ……この赤ずきん、狼と和解したでござるな」 「次は熊と和解してみるくま?」 「その挑戦、受けて立つでござる!」 「……また面倒なことになるにゃ……」 ケティーのぼやきと、森に響く笑い声。 空には鳥の声が高く、木漏れ日が穏やかに彼女たちを包んでいた。
