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チェルキーの謎ぬいぐるみ工房
チェルキーは御裁縫得意なようです。 黒猫店長の人形も作成しています。 他のみんなも作っちゃうかも ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 潮騒の音が心地よく響くアイピク島の片隅、南端の林のすぐ裏手。ヤシの木陰に設けられたテントの中で、チェルキーは満足げに頷いた。 そこは、仮設の縫製工房。小さな作業机の上には、大小様々なぬいぐるみたちが整列していた。 「ブロント少尉人形、突撃仕様――うん、ミニスカのプリーツ、良し!銃剣は可動式。銃も持たせられるし……完璧だね!」 くるくると手を動かし、チェルキーは次のぬいぐるみに取りかかった。 「次は……プーにゃん。こっちは耳、ちゃんと熊耳ね。……ふふっ、ちょっとワンピースの裾を広めにして、ぬいぐるみでもクマっぽい鋭さとプーにゃんのやさしさを忘れない……」 その顔は、職人のそれだった。 少女のように細身で小柄な体格。緑髪をポニーテールにまとめたチェルキーは、見た目こそ人間やエルフに酷似しているが、内面にはドワーフとしての底知れぬ生命力と執念が宿っていた。 普通の縫製とは違う。彼女の作るぬいぐるみは、魂がこもっている。 「……よし、あとはチャーリーぬいぐるみと黒猫店長……って、黒猫店長の再現むずっ!」 苦笑しながら針を動かしているチェルキーの周囲には、完成したぬいぐるみがずらりと並ぶ。 どこか気品ある顔立ちのリリス人形には、黒い耳カチューシャとロングシルバーの髪。冷淡な表情に似合わず、小さな手には鮮やかなカクテルグラスが握られていた。 「……ふふ。ま、リリスさんには見せたら『くだらない』とか言われそうだけど……」 チェルキーはその場にごろんと寝転がった。 テントの天井を見上げながら、潮風を吸い込む。 「こんな時間も、悪くないよなぁ……戦闘ばっかじゃなくてさ」 ぬいぐるみに囲まれ、笑うチェルキー。 その光景は、戦士でも冒険者でもなく、ただの年頃の少女のそれだった。 そして――テントの外では、ブロント少尉ぬいぐるみが風に吹かれて小さくぐらりと揺れた。 胸に小さく「突貫」と書かれた旗を掲げて。 今日も、アイピク島は平和で、可笑しくて、少しだけ不思議だった。
